『幸せな教育を願って』 元東京都小学校教諭・心理職 上羽明子さんからのメッセージ


「教職がつらい、このままでよいのだろうか?」
「自分はどのような教師になりたいのか?」
――迷いながらも懸命に頑張っている先生方に、私は『新渡戸の夢』をぜひ観ていただきたいと思います。

私は園や学校で先生方から特別支援教育(保育)や教室経営についての相談を受ける心理職ですが、がんばっているのに結果が伴わなかったり、問題が解決しなかったりすることに傷付き、無力感を味わっていらっしゃる先生とたくさん出会います。まず先生が幸せでないと、子どもを幸せにする教育は実現しませんから、私の一番の願いは、先生方に幸せになっていただくことです。
大変さばかりで充実感を得られない状態が続けば、「教職はブラックだ」と言いたくもなるでしょう。しかし、私の経験から言えば、教職は「ブラック」ではなく「ブライト(明るい)」です。近年は教職のブラック化を防ぐため、仕事量を減らす取り組みが進められていますが、負担が減るだけでは、教職ならではの充実感や幸せは得られないのではないか――そう常々感じています。

では、教職にしかない幸せや充実感を得るために、何が必要なのでしょうか。
私がこの映画から得た一つの答えは、「志」です。映画に登場する先生方は、誰かに仕えて与えられた業務をこなす「仕事」ではなく、自らの志をもって取り組む「志事(しごと)」をされています。教員免許の有無にかかわらず、ボランティアの方々であっても、授業を工夫する喜びや充実感を味わっておられます。その姿を見て、「幸せな先生」へのヒントは志にこそある、と感じました。

とはいえ、志は一朝一夕に生まれるものではありません。私自身も、まだ曖昧な思いや願いを、先輩や友人、そして子どもたちと語り合い、学び合う中で、少しずつ「志」に高めてもらっていると感じています。映画を観た後の語らいは、そうした過程を支える大切な時間でもありました。

さて、子どもたちはどうでしょうか。
残念なことに、不登校は過去最高を記録し、学校での学びをつらいと感じる子どもが増えています。一方、映画の中には、学校で学ぶ喜びに満ちた人々の姿がたくさん映し出されています。時代や環境は違っても、幸せな学びに共通しているのは、共に学ぶ「人」の存在ではないでしょうか。分からないことやできないことを馬鹿にされたり、放置されたりせず、困ったときに助け、教えてくれる友や先生がいる――その存在に勇気づけられるのは、昔も今も変わらないはずです。

人と違うことが間違いであるかのように捉えられがちな昨今、普通や機能的価値がより求められますが、多様な人と共に助け合い学び合える幸せを子どもたちが味わえる学びの場が増えてほしいと願ってやみません。

結びに、映画鑑賞後に多様な人々が感想を語り合う場は新鮮で、学び多い時間でした。そこで、新渡戸が人として共に学び続ける人を先生にしたことに意味があるのではないかと思い『教育家の教育』という随筆を読んでみました。この映画と人との出会いをきっかけに、学ぶ喜びをいただけたことに感謝いたします。

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