アフリカで漁村女性の自立支援に尽力している、NPO海のくに・日本 理事長 白石ユリ子さんからのメッセージ
こんにちは。
このたびは、「大きな夢を実現させている人たちの映画を拝見した」、という思いで帰ってまいりました。ありがとうございました。
新渡戸の夢を実現させているのは、学校を運営する先生たちだけではなく、生徒の皆さんもあってのこと、一方的に教えるのではなく「学びあう学校を目指す」ということが、スクリーンから伝わってまいりました。
新渡戸の夢を実現された皆様、その現在進行形の様子を映画化された皆様に敬意を表します。
一生懸命に学ぶ生徒さんの表情は、私たちがアフリカ女性に文字と数字を教えているときとまさに同じでハッといたしました。
魚をすり身にする技術は、皆さん、しっかりと身に着けてゆきますが、「文字や数字を学んでこなかった人が、大人になってから学ぶ」というのは、本人にとっても指導する私たちにとっても非常にハードルが高いものです。
それでも、できなかったこと、わからなかったことがひとつずつ、ひとつずつ、わかってきたときの喜びの表情は、安堵であり、自信へとつながるもの。時には涙もにじみます。
その表情を見て、私たちも明日への力が湧いてきます。
ただ、アフリカの生徒たちは「稼がなければ暮らせない」という毎日なので、通い続けること自体が難しい。そして、せっかく学び始めたのに、続けられない、忘れてしまう、ということの連続でもあります。
これは私たちの課題ですが、映画のなかでいくつかのヒントをいただきました。
それは、学ぶ機会をつくるだけではなく、学び続ける仲間をつくる大切さです。
大人になってからの学びは、学び続けるための仲間づくりがとても大切、励ましたり励まされたり、助けたり助けられたりすることで、「学校へ通う」という行動がつづくのだろうと思います。
そして、学びつづけるための「動機づくり」も欠かせない要素。私たちは「自分の名前が書けるようになろう」と進めていますが、書く機会がないと、せっかく覚えたサインも書けなくなってしまいます。
「自分の名前なのに!」「あなたのお名前なんですよ!」と愕然としますが、文字が身につくまでには、覚えたてのサインを書く機会が何回もある、だれかに手紙を書いて喜ばれる、自分もうれしい、という経験が大切と実感しました。今後はそうした機会づくりもプログラムに入れていこうと、とあらためて思いました。
学校には歌も必要ですね。歌には、皆がひとつの心になれる力があります。有島武郎作詞の校歌をお持ちの遠友夜学校には、学校という存在の理想がつまっています。
そして学校名の「遠友」について。日本語としては発音しづらい「えんゆう」という言葉がなぜ、学校名に選ばれたのかと思いましたが、論語からきている、と気づき、大いに納得いたしました。「朋あり、遠方より来る。また楽しからずや」。
北海道大学の学生さんたちが50年にわたり先生を務めていたとのこと、生徒だった女性と結婚された方もいらしたと映画の中で紹介されていました。大学生という学ぶ立場の人たちが、学ぶ機会を得られなかった人たちを指導する学校。上下の関係ではなく、共に学びあう学び舎でありたい。建学の精神がそのまま学校名になっていることに感銘を受けました。
新渡戸稲造が夢見た理想は、いまも北の大地で後継者たちの試行錯誤と創意工夫によって受け継がれている。映画をとおして、一つの奇跡を拝見した思いです。